ロレインの長い一週間。

島町のトラディショナル・フェスティバルも無事終わり
さーて、次はクリスマスまで、あともう一働き!
という空気が島町に流れた週末の翌日。



ハウスメイトのロレインが、
首都からほど近いキルケニーの病院まで往復してきました。



彼女の目的は、目の近視補正施術。
日本では「レーシック」という名前で知られる
角膜をレーザーで削って屈折率を変え、
視力を回復するという手術です。



ロレインが受けたのは、正しくは「レーザック」と言って
「レーシック」よりも少し複雑で、
施術時間も長いものだったとのこと。



彼女は、長年コンタクト・レンズを愛用してきたため、
角膜が薄くなっていて、
普通のレーシックでは十分な効果が出ない、と、
事前の検査で診断されたのだそうです。




ともかく、彼女は、事前に渡された説明書を熟読し、
スケジュールを調整して一週間の休みを取り、
施術後一週間分の食事を、あらかじめ作って冷凍し、
準備万端整えました。



「施術後、ちゃんと見えるようになるまで
 一週間くらいかかるって言うから
 なにして過ごすか、それがいちばん心配なんだよねー。
 きっと退屈しちゃうだろうなー。
 だって、ラジオ聞くかフィドル弾くかしか、
 できることないじゃん?」



そんなのんきな会話をしたのも、施術のつい3日前。



ところが、退屈などする暇はいずこの空に。



実際に施術を終えてみたら、予想をはるかに上回る、
壮絶な痛みとの戦いが、彼女を待っていたのでした。
きゃーー。(> <)




施術の翌日、キルケニーから電車で帰ってくるロレインを
夜、島町の駅まで迎えに行ったら、
彼女は帽子を深くかぶり、
夜だというのに濃いサングラスをかけて
なにかの影のようにひっそりと
プラットフォームに立っていました。



体や眼球をちょっとでも動かすと、その後の痛みがひどいらしく
助手席に硬直して座ったまま、ちょっとした車の振動にも、
眉根を寄せる彼女。
家に着くと、二階の自分の部屋に上がることもできず
そのままキッチンのソファに横になります。



鎮痛剤のソルパディンを飲んでも痛みが引かず、
もう一錠、ためしにもう一錠、と足して飲んでいるうちに
最初の晩に飲んでしまった鎮痛剤が、全部で16錠。
(↑普通なら1錠で効く薬なのに!)



次の朝キッチンで私が目にしたのは、
鎮痛剤のオーバードーズで頭はもうふらふらになってるのに
それでも目の痛みに耐えられなくて、
処方された鎮痛用の目薬を
すでに2日分使い切っているロレインの姿でした。



うわああああああ。




とりあえず湯冷ましを作って冷蔵庫で冷やし、
滅菌ガーゼを使って目の周りを冷やします。
でも、目頭に置いた端から、ガーゼはみるみる乾いていく。
まぶたが熱をもっているのです。



「と、とりあえず、その鎮痛用の目薬、
 町に行って同じのがあるかどうか見てくるから。寝てて。」
と言い置いて
あわててまた車を出そうとする私の後ろから



「うん…ご、ごめんね。あと、
 この滅菌ガーゼも少し買ってきてくれる…?」



こんなよわよわしい懇願を、誰が見捨てることができますか。



「わかった、ガーゼも買ってくる。とりあえず行ってくる!」
「あ、あとついでに…」
「あと何がいるの?」
「ソルパディン…もう一箱…」



…まだ飲む気かおい。




いやあ、そんなわけで、稀にみるすごい一週間でした。
f^^;



5日目くらいから、ようやく回復してきたロレインは
どうにか立って歩けるようにはなったものの
まだ視力がよくなったかどうかすら、試していない様子です。



施術そのもののプロセスを聞いたら
麻酔をかけていたから痛くはなかったけれど
レーザーの針が眼球に向かって下りてくるのがモロ見えるし、
角膜を灼いている熱が顔全体で感じられるしで、
二度としたくない体験ワースト1に、間違いはない、
とのこと。



「今の気分は?」と重ねて訊いたら
「タイム・マシンで一週間前の自分のところに行って
施術するなって言ってやりたい」とのことではありますが。
f^^;




とりあえず、私にとってもロレインにとっても
ハウスシェア史上もっとも長い一週間だったことだけは、
間違いありません。



目は大切に。


※写真はハロウィン・スイーツの残り。きゃーー。