夏の日の夕方。

リスカナーにセッションに向かう道すがら
夕方の空があまりに広くきれいに見えたので、
写真を撮ってきました。






北国に住んでいて季節を感じるのは、気温の変化よりも、
むしろ日照時間の変化によるときのほうが多いと思います。



アイルランドは、とりたてて緯度の高い国ではないけれど、
夏至の日は12時近くまで空に残照が残っているし、
冬至の日は、冬時間とはいえ3時にはもう暗くなっている。



その差を埋めるように、日々の日照時間が変化していくので
7月の末ともなると、夏至からわずか1ヶ月とはいえ、
あ、日が短くなってきたな、と感じることもしばしばです。



それでも、夏の日の夕方――それも、
浅いオレンジ色に染まった空気の中を、
影がどこまでも伸びていくような
涼しく、少し物悲しく、でもたっぷりとした時間を堪能できる
長い長い夕方は、また格別な時間。



日本だと、どんなにきれいな夏の夕暮れも、
1時間くらいで暮れていってしまいますものね。
それが、この島では、仕事が終わり一日が終わったその後で
のんびり日の名残を楽しむ時間が、6時間もあるわけです。



この時間こそが、アイルランドの夏らしさ、
1年でいちばんうつくしい時間だったりもするのでした。



そういえば数年前、やはり夏至近いアラスカのアンカレッジで、
夜中の1時を回っても、
全天が茜色に染まったままの空を頭上に戴きながら
いつまでもアイリッシュ・セッションをしていたことがありました。



アラスカのミュージシャンもダンサーも、みな、
厳しい冬を幾度も越えているからこそ、暖かく逞しく心深くて、
暮れなずむ夕方を愛おしんで、
弾いたり歌ったり飲んだり踊ったり・・・。
人生の中でいちばん幸福な記憶のひとつです。
ああ、やはりもう一度アラスカに戻らねば。



そんなことも思い出させる、夏の夕空。



左手でハンドル、右手にカメラを持ったまま
運転中にこの写真を撮ったことは、
おまわりさんには内緒です。(笑)