ある秋の明るい雨の朝。

「あめりかうまれの ありの ありすさんが、
 あるあきの、あかるい あめの あさ…」で始まる
『それ、ほんとう?』という、松岡享子さん作の本が
子供のころ大好きだったことを思い出しました。



長新太さんの独特の絵がついていて、
でも基本的には言葉の響きのおもしろさだけで、
子供を虜にできる本。
今でも、手元にあったらいいなあと思う絵本のひとつです。




なぜそんなことを急に思い出したかというと
この日、9月21日水曜日が、朝から大雨だったにも関わらず
ときどき止んだり、日が差したり、また大雨になったりと
不思議な明るさのある、雨の朝だったからです。




21日、私はL大学に仕事に行く途中で、
ちょっと急いでいました。
頭の中であれやこれや考えて、
ちょっとぼーっとしてもいました。



さらに、島町に住んでいたころには、
L市まで高速道路で通っていたところを、
ちょっとL市寄りのマルメロ村に住むようになって3週間、
渋滞を避ける目的で、くねくね曲がる細い村道を
慣れないながらも運転するようになっていました。



天気は雨。大雨だったり、降ったり止んだり、
道路の状態も決していいとは言えません。



そんな中で、急な左カーブ。
あ、対向車線の車がインに入って近づいてくる。
ちょっと危ないかも…と感じて、ふとハンドルを左に切ったとたん、
左サイドが道路脇の土手にぶつかり、
勢いで車はそのまま土手に乗り上げました。



うわあああ、なんだかナナメになったまま
とんでもないところを走っているような気がする〜〜と思った瞬間、
きれいにひっくり返って、さらに数回、道路上でスピン。



気がつくと、運転席でハンドルを握り、ブレーキを踏んだまま
私は上下さかさまの宙吊りになって、
「うーん、とりあえずここから出なきゃなあ…。」と考えていました。







何はともあれ、シートベルトを外して足を下向きにし、
運転席の扉をあけて脱出します。



場所が、地元民しか使わない裏道だったことに加えて
事故の様相が派手だったもので、
親切なクレアの人たちが、通りかかるたびに車を止めて
警察を呼んでくれたり、交通整理をしてくれたり、
呆然としている私に声をかけ続けてくれたりしました。



「あなたなの? 運転していたのはあなたなの? 怪我はない?」
「一緒に乗っている人はいなかったの?」
「他の車も巻き込んでないのか? 
 すごい、きみはなんてラッキーなんだ。」



私よりも、周りの人たちのほうが、
事態の深刻さを判っていたようで
「extremely lucky girl」だと、その日何回も言われました。



でも、私自身は事態がちゃんと飲み込めなくて
まるで雲の上を歩いているような気分。
後になって改めてこんな写真を見るまで
人々がものすごく心配してくれた訳が、まるで判っていませんでした。
(だいたい、そんな状況の写真を自分で撮っているところがやばい!)







やがて警察が来て、てきぱきと処理を始めました。
ひっくり返った車を起こして、近くのガレージに引き取ってもらい





それから消防車が2台もやってきて、道路の洗浄。





これは、基本的には漏れたオイルや、
飛び散ったガラスを洗い落とす作業なのですが
今日は雨のせいで道がいつも以上に滑りやすくなっているから、と
事故現場以外のところも、念入りに洗っていきました。






結果的には、私の車一台だけの自損事故。
誰も巻き込んでいないし、私自身も含め怪我人も出なかったので
普通に警察と保険会社で事後処理をして
「はい、災難だったね。おつかれさまでした。」と、
1時間後には、何事もなかったかのように解放されてしまいました。




その後数日、ぼーっとしたままいくつかの事務処理を済ませましたが
ようやく、こうして撮った写真などを見返すところまで回復してくると
自分が本当にどれだけ幸運だったのか
じわじわと判ってきて突然怖くなります。



私は死んでいたかもしれないし、
昏睡状態で病院にいたかもしれないし、
あるいは意識はあっても体が動かなかったかもしれない。



さらにひどいことには、自分は無事でも
誰か通りがかりの人を巻き込んで、
その人を病院送りにしていたかもしれない。



でも、そのどちらの事態にもならないまま、
今回は生き残りました。
よくよく見たら、親指の先に爪が割れた形跡がちょこっと。
でもそれだけ。本当にそれだけ。
信じられない。





私を守ってくれた、すべてのものに感謝しています。



もう一生、宝くじ当たらなくてもいいや。