「オーランモアの牡鹿」の謎。

今回はミュージシャンのみなさま向けの話題です。(笑)



この音楽をやっている方ならほぼ全員、
「The Bucks of Oranmore」というリールはご存知ですよね。
メジャーだし盛り上がるし、
難しすぎないわりには変化に富んでいるし、
私もこの曲は普通に好きなのですが、そんな中、
東京のミュージシャンの間でずっと囁かれている疑問がありました。



「このタイトルに入ってる“bucks”って何?」



辞書で引くとたいてい、
「牡鹿、あるいは鹿やウサギなどの雄」と出ています。
というか、普通の辞書にはまず、それくらいしか載っていません。
だから、じゃあやっぱり「オーランモアの鹿」なのかなあ?
オーランモアに鹿、いないのにね? …という見解に、
だいたいのところ東京勢はまとまっていたのです。



(↑オーランモアはこんなところ。鹿はいません。)



ゴールウェイに並々ならぬ愛着を持つさがーみちゃんと、
「オーランモアの鹿」「オーランモアの牛」「馬」「羊」…と
いろんな動物にあてはめてメールのやり取りをしたのも、
懐かしい記憶。



そういえば、某楽譜・楽器通信販売業の池辺さんは、
こちらに来たとき
「この“バック”ってアメリカの1ドル札のことだよね?」という
斬新な説を唱えて行かれましたね。(笑)



なんで19世紀アメリカの風俗がここに出てくるんだ!という…。
アイルランドでドルが流通したことは、
過去に一度もありませんよ?



でも、それくらい、
この「なぜオーランモアにバックスがいるのか?」というのは
私の周囲では長年の疑問だったのです。




さて。その疑問が、最近になってようやく解けました。(^^)



なんと"buck"というのは、
今で言うギャング・スターのことだったのです。
若くて、ちょっとイキがってる男の子たち。
bucksという表現自体、わりと古い、レトロな言葉なので、
もう一般には使われていませんが、
単語として残っているとのことでした。



そんな彼らが、なぜ「オーランモアの青年たち」と呼ばれたのか。




実は当時、まだ中流階級社会には
「決闘」の風習がありました。



もちろん19世紀ともなれば、そんな危険な習慣は法律で禁止されます。
でも、「名誉をかけた闘いは受けて立つのが筋というもの」、
あるいは単に「決闘ってカッコイイ」なんて考えている彼らですから
保安局の目を盗んで、町から遠く離れた場所で
ケンカや決闘をするのです。



つまりそれが、ゴールウェイから見たら、
10kmほど離れたオーランモアくらいの位置というわけ。



実際に決闘をする人たち、というより、
オーランモアに行って決闘でもやりそうな奴ら、という意味での
「The Bucks of Oranmore」なのでした。




数年来の疑問がようやく解けて、ああ、すっきり!!(^o^)/
これで心おきなく、このリールが演奏できます。



enjoy playing!!